領域の狙い

代表挨拶

われわれ人間を含む多くの生き物は、集団を作ります。これまでの行動生態学では、集団内の個体が協調して、餌を探したり外敵から逃げたりすることで、生存確率を上げ、結果として種が維持されてきた、と考えられてきました。しかし、生き物の集団を見ると必ず皆とは違う行動をとるあまのじゃく、すなわちコントラリアン(逆張り家)が存在します。構成員各々が向社会的であることが最も理に適っていそうな生き物の集団で、なぜコントラリアンが生じるのでしょうか?

集団からのはぐれ物、コントラリアンは、一見すると集団の秩序を乱すアナーキーな存在に見えますが、集団にとって欠かせない働きをしているのではないか?と私たちは考えました。例えば、コントラリアンが集団の多数派が選ばない魅力の少ない選択肢をとることによって、魅力的な選択肢への一極集中を解決して、集団内の競争が減ることが期待できます。また、コントラリアンが、その集団がまだ存在に気づいていない新たな資源やアイデアを探索し見つけることによって、長い目でみると集団全体に大きな利益をもたらすことも考えられます。

本研究領域では、「集団内の個人の行動や思考の多様性が、個々人の利益や幸せの向上だけでなく、集団全体の利益、安定性、頑丈さ、柔軟さにも貢献する」というアイデアを、さまざまな生物種を対象とした生態学・行動遺伝学・神経生理学・心理学研究を通じて実証することを目指します。

領域代表 宮本 健太郎

理化学研究所脳神経科学研究センター/思考・実行機能研究チーム チームリーダー

領域概要

23年6月23日に開催したキックオフシンポジウムでご紹介した本領域の概要説明動画をYoutubeにアップロードしました。英語です。

発表者:石井 宏憲 (関西医科大学)