学術変革領域研究(B)
逆張り戦略がもたらす新しい社会均衡のしくみ
北大シンポジウムご参加いただきありがとうございました!
News
2024.09.20-21 北海道大学で領域主催シンポジウムを開催しました
2024.09.06 研究トピックとして宮本の理研ニューロスクエアのトーク動画「自己と他者のこころを想像する脳の仕組み —あまのじゃくはみんなの役に立つ」をシェアします
2024.08.29 研究トピック「メダカでは独自に進化した遺伝子が形の認識能力を制御する」をUP
2024.08.23 横井がCommunications Biology誌に論文を発表しました
2024.08.20 北大シンポ・ポスター/ワークショップの参加登録を締切ました
2024.07.31 研究トピック「鼻も心の鏡」をUP
2024.07.27 Neuro2024にて共催シンポジウムを開催
詳細は活動報告をご覧ください
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コントラリアン生物学ってどんな研究プロジェクト?
学術変革領域研究Bは文部科学省の科学研究費助成事業の一つで、若手研究者たちの新しい学術領域開拓への挑戦を支援するものです。
私たちはこれまで着目されてこなかった生物集団の中にいる「あまのじゃく」個体に着目し、その新しい生物学的意義と社会における重要性を研究します。
みんなが整然と群泳するのを横目に、ひとり柱のそばに佇むあまのじゃくなヨスジフエダイ(手前)
私たちはなぜ群れをつくるのか
動物にとって群れ・集団を形成することは餌を効率的に見つけたり、パートナーに巡り合えたり、敵から身を守りやすかったりと様々な恩恵があります。しかし仲間は同時にライバルでもあり、資源を巡る競争を激化させてしまうというジレンマが生じます。生物はどのようにこの問題を解決し、集団性を進化させてきたのでしょうか?
コントラリアンってなに?
コントラリアンとは逆張り屋・あまのじゃくさんのことです。みんなが同じことをしていると、ついそれとは違うことをしたくなることってありますよね。実は生き物の集団にも必ずと言っていいほど、皆とは違う変わった行動を取るコントラリアンがいます。なぜ向社会的であるべき集団性生物においてコントラリアンが生まれるのでしょうか?
水面近くでエサを探すみんなに対し、底面を探すあまのじゃくメダカ
私たちの仮説
私たちは群れ形成におけるジレンマを解消する重要な存在としてコントラリアンに着目しています。一見、反集団的なコントラリアンですが、その存在は集団内の潮流をリバランスし、魅力的な資源への一極集中を解決する可能性を秘めています。またコントラリアン自身にも競争を避けるがゆえに低コストで成果を得られるMinority advantageがあります。コントラリアンがいる集団では空きニッチが活用されることも重要です。つまり、集団内で起きる一極集中に対して自然とコントラリアンが発生する仕組みがあることで、利己的で独立した個同士であっても集合的均衡が可能となり、個および集団レベルで適応的となり得えます。
Boidモデルを用いた思考実験(アニメーション)。Agentの一つをコントラリアン(橙)として集団の進行方向(水平軸のみ)が揃うと反発させている。みんながHigh value rewardにつられて右の餌場に向かうので、コントラリアンはLow value rewardの左の餌場に向かう。
本プロジェクトが目指すもの
集団性進化の謎という生物学の根幹テーマに対し、私たちは「コントラリアンが資源競争の激化という集団化が抱える問題を解消するのに欠かせない、群れ(集団)を形成する動物に備わった生物学的な仕組みである」というコントラリアン仮説を掲げて挑みます。コントラリアンを従来の枠組みで説明するにとどまらず、他者に適応する動的な存在として捉えその遺伝子・神経基盤を解明する、新たな総合生命科学領域「コントラリアン生物学」の創生を目指します。社会に属する個と集団意思決定の在り方を再定義し、将来的に社会科学・経済学・心理学・教育・医療・工学など幅広い分野に大きな波及効果をもたらすと期待しています。実際にどんな研究・実験をするのかについては計画研究をご覧ください。